小説-梅を見て|著=国会と議員を探せ

 その梅を見ていると、私の頭に、去年の情景が浮かんで来た。毎年、新学年のはじまる頃、この駅では三色の花が咲く。太い幹から伸びる枝に咲く、白いサクラ、いや白では無く淡い色。たとえるなら、女性の化粧だろう、顔につける淡い頬紅の色。その横に、少し低めの、桃の木が寄り添っていて、花びらは、真っ赤な口紅を思わす、ピンク色。その仲を取り持つのがレンギョウで、その葉が黄色く色づく。

 見事なまでにそれらが同時に咲き乱れ、この駅の春を迎えるのだった。それをバックに、四両編成の列車が止まっていく瞬間が、マニアの間では有名な事らしい。その証拠に、毎年その頃になると、カメラを持った人や、観光に訪れる人、その訪れる人を撮るカメラマン。そんな人達が、大勢押し寄せていた。

 その風景も、今年で見納めだ。その事を知っているのは、うろついている猫と、駅舎に飾ってある写真。その位だろうか、ほとんどの市民は知らない顔をしている様な気がする。

 少し寂しさを覚えた。

 ふたたびおじさんを見ると、新聞で顔が見えない。すでに新聞を持つ手は硬く握り締めるようにしていた。その握り締めたような手と、おじさんの持っている新聞が、今日はなぜか妙に目を引いた。何時もならそんな物は、私の視野に入って来ない物なのに。見える面はテレビ欄で、それを眺めた所で、特に何も思う事は無い。

 それよりも、その新聞に目を惹かれている、自分自身の事が気になった。その時、まだ見えぬ列車の、近くで鳴る汽笛が辺りに響いた。駅のはずれに見える踏切の警報機が鳴り出す。ほぼ同時に見え出す列車が、今日も定刻通りにホームに滑り込む。

 列車がホームの中央まで来ると、今度は駅の上り方向に見える踏切の警報機が鳴り出す。そして何時もの様に、列車に乗り込む乗客は私達ふたりだけだった。列車に乗り込むと今日の乗客は結構多い。空いてる席に、おじさんと並んで座わる、二年ほど前からの決まり事みたいになっていた。 通勤は車

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